10月14日は鉄道の日
日本で最初に鉄道が開通したのは、いまからおよそ150年ほど前の、明治5年の1897年10月14日、新橋~横浜間を走り始めた。それにともない10月14日が鉄道の日(鉄道記念日から変更)となりました。当時は新橋~横浜(現在の桜木町駅)付近まで途中駅はなく、ノンストップでおよそ53分で走っていたそうです。線路の場所も違いますが、現在は新橋~横浜間をJR東海道本線でおよそ23分(途中、品川、川崎に停車しながら)で走ります。新幹線であれば東京~小田原がおよそ35分、150年もの間、著しい技術の進歩によって、私たちは様々なシーンでのスピードを手に入れました。
最短、最速を求める世の中へ
電車の乗り換えを調べる時、どのような方法で調べているでしょうか?僕もそうなのですが、ほとんどの人がスマートフォンやPCを使って調べているのではないでしょうか?スマートフォンの登場前は時刻表を見て、路線図を見て、自分で乗り換えの選択をしていたはずです。でもいちいち大きな時刻表を持ち歩かず、最短な経路を素早く見つけ出してくれるデジタルを利用し、依存するようになりました。我々はまたスピードを手に入れたのです。最短、最速この言葉に縛られているかのように、さまざまなシーンにおいても最短、最速を求めるようになりました。それは地図の世界でも一緒です、出来るだけ近道、最速で目的地へ。提供の早い飲食店へ、配送の早い業者へ、最短で習得できるビジネス講座。
心の余裕から生まれる感動
新橋~横浜間を53分かけて走っていた時代はどうだったのでしょうか。53分が最短だった時代、動く景色に感動し、走る鉄道に手を振り、走り追いかける、いろいろな発見や感動があったはずです。もちろん、最短最速の中に多くの発見や感動もありますが、すこし形の違う、寄り道や偶然、心の余裕からくるような心が動く瞬間があったように思うのです。高校時代からの地理の恩師である藤井先生はいまでも電車に乗る時は紙の時刻表を持っています。旅行や遠出の時はもちろん、都内の移動も時刻表です。「どうしてですか?」と尋ねると「その方が、面白いからだよ」とシンプルかつ最高の答えを..。
鉄道に乗ることは面白いことで、面白い景色、経験、体験ができるチャンスなのにそのチャンスを、逃していたのかと思うと、芸人というかひとりの人間として、さみしい乏しい選択をしていたんだろうと思いました。先生は最短最速ではなく最適を選択していたのです。
遠回りしないとたどり着けないけない場所
僕の地図コレクションの中に「レクリエーション全国旅行案内図」という全国を旅するために持ち歩ける地図があります。持っている中でも上位に入る好きな地図で、何年に発行されたのかは定かではないのですが、携帯電話やPCが登場するよりは以前のものになります。この地図に時刻表はついていないのですが、これ1冊で北海道から九州までの鉄道が書かれていて、全長は4mくらいあるのに、表と裏、すみずみまで路線図や絵図、名産品や観光名所がぎっしり書いてあるのです。家で見ているだけで相当テンション上がる代物なのに、当時の人は、これを持って旅をしていたのかと思うと、心の踊りが止まることを知りません。広範囲で見られるので、寄り道が目に入る、途中下車、遠回り、しないとたどり着けないけれど、行かずにはいられない。なぜなら「その方が、面白いから」きっと行った先には感動や驚き、時に落胆、その後笑い話が待っていたに違いない。
たまにはのんびり無駄を楽しみたい
スピードを手に入れてしまった以上、いまからのんびりするのは難しいけれど、たまにはのんびり無駄だと思うような路線を楽しみたいと思う。
そしてこのレクリエーション全国旅行案内図を持ち、時代の変化を楽しみながら、当時の人の気分に浸りながら旅を楽しみたい。
そう思いながらこの原稿をPCで書き、デジタルで次の仕事先までの乗り換えを調べてしまった。手にしたものを手放す勇気はもう少し先になりそうだ。
筆者:小林知之
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